新型コロナから回復したあと 体はある程度動くのに どうしてもやる気が出ない 何をするのもおっくう という悩みを抱える人は少なくありません。
ベッドから起き上がる気力が湧かない 仕事も家事も先延ばしになってしまう 前に好きだったことに興味が持てない そんな症状もロングコビッドの一つとして語られています。
この記事では コロナ後遺症でやる気が出ない状態から 少しずつ回復していった体験談と 心療内科での治療 セルフケア 栄養やサプリメントの考え方をまとめます。
コロナ後遺症 やる気が出ない ロングコビッドとは
ロングコビッドで報告される無気力 気力低下の症状
ロングコビッドでは 倦怠感やブレインフォグと並んで 無気力感や意欲低下がよく見られます。
朝起きても一日が始まる感じがせず 何もする気が起きない 頭では「やらなきゃ」と分かっているのに 体と心が動かないと訴える人が多いです。
特徴的なのは 単なる怠け癖ではなく 身体的なだるさ 頭のぼんやり感 睡眠の質の低下など 複数の症状とセットになっていることです。
以前は普通にできていた仕事や家事 趣味への興味が急に薄れ 自分でも別人になったように感じて戸惑う人もいます。
うつ病との違いと重なる部分 コロナ後の心と脳の変化
やる気が出ない状態は うつ病と重なる部分が多く 区別が難しいこともあります。
うつ病では 強い自己否定感や罪悪感 死にたいほどつらい気持ちなどが前面に出ることが多い一方 ロングコビッドの無気力は まず身体症状とセットで現れやすいのが特徴です。
コロナ後には 免疫反応や炎症により 脳内の神経伝達物質(セロトニン ドーパミンなど)のバランスが乱れると考えられています。
さらに 長引く体調不良や社会からの孤立が 心のエネルギーを奪い 「やる気が出ない」が固定化されてしまうこともあります。
コロナ後遺症 やる気が出ないが改善するまでの体験談
体験談1 寝たきり状態から少しずつ家事ができるようになったケース
一人目は30代女性 在宅勤務の会社員。
コロナ感染から一カ月ほど経っても 強い倦怠感と無気力感で ベッドから起き上がることすら苦痛な状態が続きました。
最初の数週間は とにかく寝ている時間が長く シャワーを浴びることさえ「ものすごい大仕事」に感じて先延ばしにしてしまっていたそうです。
家族の勧めで心療内科を受診し ロングコビッドによる適応障害と診断され 抗不安薬と少量の抗うつ薬が処方されました。
医師からは 「やる気そのものを出そうとするのではなく 行動を豆粒サイズに分解して とにかく『始める』ことだけを目標にしましょう」とアドバイスされました。
そこで この方は「今日はベッドから起き上がるだけ」「明日は洗面台まで行く」「明後日は洗濯物を一枚だけたたむ」といった極端に小さな目標をノートに書くことにしました。
一〜二週間は波がありましたが 小さなタスクをこなすたびに「今日もゼロではなかった」と感じられるようになり 自己否定感が徐々に和らいでいきました。
一カ月後には 短時間の在宅勤務に復帰し 三カ月後には 家事全般をほぼこなせるレベルまで回復したそうです。
体験談2 休職とカウンセリングで仕事復帰できた会社員のケース
二人目は40代男性 営業職。
コロナからの回復後 仕事に戻ったものの 以前のようなパフォーマンスが出せず 会議準備もメール返信も全てが面倒に感じてしまう状態になりました。
「自分は怠けているのではないか」という罪悪感から 余計に追い詰められ 寝付きも悪化。
心療内科を受診したところ ロングコビッドによるうつ状態と診断され 数カ月の休職と 抗うつ薬の服用 カウンセリングが勧められました。
カウンセリングでは 「できなくなった自分」を責めるのではなく 「今のエネルギー量に合わせた生活設計」を一緒に考えることから始めました。
毎週のセッションで 仕事への恐怖や同僚への申し訳なさを言語化し 自分が置かれている状況を客観的に整理できるようになっていきました。
三カ月程度の休職期間で 睡眠と食欲が整い 「短時間なら働いてみよう」という気持ちが芽生えたタイミングで 時短勤務から復帰。
最初は半日勤務から始め 半年かけてフルタイムに戻し 現在は残業を控えつつも安定して働けているとのことです。
体験談3 鍼灸と漢方 サプリメントで「動ける自分」を取り戻したケース
三人目は50代女性 フリーランス。
コロナ感染後 数カ月たっても 疲労感と無気力感 頭のぼんやり感が続き 仕事の締め切りを何度も延ばしてもらう状況になりました。
西洋医学の検査では大きな異常が見つからず 「しばらく様子を見ましょう」と言われるだけで 不安ばかりが募っていきました。
そこで ロングコビッドに対応している鍼灸院と 漢方外来を併用してみることにしました。
鍼灸では 自律神経と気血の巡りを整える目的で 週1回の施術を受け 同時に 漢方薬(補中益気湯など)を処方され 体力と気力を補う治療を開始。
加えて 自身の判断で ビタミンB群と鉄 亜鉛 オメガ3を含むサプリメントを取り入れました。
最初の2〜3週間は大きな変化を感じなかったものの 一カ月を過ぎる頃から 「午前中に一つだけ仕事を片づけられた」「夕方まで起きていられた」という日が増えていきました。
三カ月後には 仕事の本数を少しずつ増やせるようになり 半年ほどで「今日はけっこう動けた」と感じる日が当たり前になったといいます。
心療内科・精神科で受けた診断と主な治療法
診断の流れ 「だるさ」なのか「うつ」なのかを見極める視点
やる気が出ない状態が続く場合 心療内科や精神科では まず詳細な問診が行われます。
いつから症状が出ているか コロナとの時期的な関係 睡眠 食欲 体重変化 思考の内容(自己否定感 希死念慮の有無など)を丁寧に確認します。
ロングコビッドの無気力と 典型的なうつ病は重なりが大きいため 医師は 身体症状の強さと メンタル症状のバランスを見ながら診断を行います。
必要に応じて 血液検査や甲状腺機能検査 脳の画像検査などで 他の病気の可能性を除外することもあります。
抗うつ薬 抗不安薬 漢方薬 認知行動療法などのアプローチ
治療の中心になるのは 薬物療法と心理療法の組み合わせです。
抗うつ薬は セロトニンやノルアドレナリンの働きを調整し 気分と意欲を底上げする役割を担います。
抗不安薬は 不安感や緊張が強い場合に短期間使われることがあり 焦燥感や不眠が和らぐことで 結果的に「動き出せる自分」につながることもあります。
漢方薬では 体力と気力を同時に補う補中益気湯 気分の落ち込みや不安を和らげる加味帰脾湯などが用いられることがあります。
認知行動療法では 「何もしていない自分はダメだ」という極端な思考パターンを少しずつ修正し 「今の体調でできる範囲ならOK」と現実的な基準を一緒に探っていきます。
日々の行動記録をつけ 小さな達成を可視化することで 自信と自己効力感を取り戻していくプロセスが重視されます。
自宅で続けたセルフケアと生活習慣の工夫
「やる気を出そう」としない ペーシングと小さなタスク分割
ロングコビッドの無気力に対しては 「根性でやる気を出す」アプローチはほとんど役に立ちません。
むしろ 「今日できることを1ミリだけ」に設定し エネルギーを使い切らないペーシングが重要になります。
具体的には 次のような工夫が有効です。
・タスクを細かく分ける(洗濯を「洗濯機を回す」「干す」「取り込む」に分ける)
・「始めるだけ」を目標にする(5分だけパソコンを開く 机に座るだけで良いなど)
・やることリストを3つではなく1つに絞る(エネルギーが低い日は「1タスク完了したら合格」にする)
「やる気が出たら動く」のではなく 「動き始めるから ほんの少しだけやる気がついてくる」という順番を意識することがポイントです。
睡眠 リズム 運動で自律神経とホルモンバランスを整える
やる気の有無には 自律神経とホルモンバランスが大きく関わっています。
睡眠は特に重要で 就寝と起床の時間を毎日できるだけそろえ 寝る前のスマホやカフェインを控えることが基本になります。
運動は 激しいものである必要はなく 5〜10分の散歩やストレッチを「毎日続ける」ことが大切です。
筋肉を軽く動かすことで 脳への血流と酸素供給が増え うっすらとした活力が戻りやすくなります。
また 朝の光を浴びることは 体内時計をリセットし セロトニンの分泌を促すため メンタル面の安定にも大きく寄与します。
完全にベッドから出られない日は 窓を開けて日光を浴びることから始めても構いません。
ロングコビッドの無気力に関連して語られる成分とサプリメント
ビタミンB群 鉄分 亜鉛など脳と神経を支える栄養素
やる気の低下には 栄養状態も深く関わっています。
ビタミンB群(特にB1 B6 B12)は 脳と神経のエネルギー代謝に不可欠で 不足すると疲れやすさや集中力低下 無気力感につながりやすくなります。
鉄分不足は 貧血だけでなく 脳への酸素供給低下を通じて 倦怠感 無気力 感情の落ち込みを引き起こします。
特に女性は隠れ貧血が多いため 一度血液検査でフェリチン(貯蔵鉄)を含めて確認しておくと安心です。
亜鉛は 神経伝達物質の合成に関わり 味覚だけでなく メンタル面にも影響を与えるミネラルです。
不足すると 食欲不振や意欲低下が出やすくなるため 食事やサプリでの補充が検討されます。
オメガ3 BCAA コエンザイムQ10などエネルギーと気分を支える成分
オメガ3脂肪酸(EPA DHA)は 抗炎症作用と脳機能のサポートで注目されており 気分の安定や脳の霧の改善を実感する人もいます。
青魚を食べる機会が少ない場合は サプリメントでの補充を検討する価値があります。
BCAA(分岐鎖アミノ酸)は 筋肉と脳のエネルギー源となり 「少し動きやすくなった」「散歩の後のぐったり感が減った」と感じる人もいます。
コエンザイムQ10は ミトコンドリアのエネルギー産生を助ける補酵素で 慢性疲労感の軽減を目的に用いられることがあります。
これらのサプリメントはあくまで補助的なものであり すべての人に効果があるわけではありません。
使う場合は 既存の持病や服薬との相性もあるため 医師や薬剤師に相談しながら取り入れるのが安全です。
不安との付き合い方と ロングコビッドlongcovidからの回復を目指すうえで大切なこと
家族や職場への伝え方 「甘え」ではなく症状だと理解してもらう
「やる気が出ない」という訴えは 外から見ると甘えや怠けと誤解されやすく 本人をさらに追い詰めます。
家族や職場には 「体力も気力も電池が切れている感じ」「頭では分かっているのに体が動かない」といった具体的なイメージで伝えると理解されやすくなります。
医師の診断書や説明資料があれば 「ロングコビッドの一症状であり 医学的にも認められている状態」であることを客観的に示せます。
在宅勤務や業務量の調整 休職などの選択肢を 一人で抱え込まず 早めに相談することが大切です。
長期戦を乗り切るための心構えと回復の「波」と付き合うコツ
ロングコビッドからの回復は 真っ直ぐな右肩上がりではなく 良い日と悪い日が波のように交互にやってくるのが普通です。
昨日できたことが今日はできない という日があっても 「戻ってしまった」と悲観しすぎず 「全体としては少しずつ前進しているか」を見る視点が重要です。
良い日に頑張りすぎて 次の日に寝込んでしまうパターンを避けるため あえて6〜7割の力で止めておく意識も役立ちます。
回復の過程を日記やメモに残しておくと 数カ月単位で見たときに 自分が確かに前より動けていることに気づけて 心の支えになります。
まとめ コロナ後遺症 やる気が出ないと向き合いながら改善していくために
コロナ後遺症の「やる気が出ない」は 気持ちの問題ではなく 脳と体のエネルギーシステムがダメージを受けた結果として起こる症状です。
心療内科での診断と治療 鍼灸や漢方 栄養補給といった多面的なアプローチを組み合わせることで 多くの人が少しずつ「動ける自分」を取り戻しています。
完璧さや即時の回復を求めず 小さなタスク 小さな前進を積み重ねる姿勢が ロングコビッドlongcovidとの長い付き合いの中で 何よりの武器になります。
一人で抱え込まず 医療者と周囲のサポートを借りながら 自分のペースで回復の道を歩んでいきましょう。


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