新型コロナから回復したあと 夜になると毎晩のように悪夢を見る 何度も飛び起きてしまう 眠るのが怖くなる そんな睡眠のトラブルに悩む人が増えています。
高熱で苦しんだ記憶や入院中の恐怖感が夢に出てくる人もいれば 理由は分からないのに追いかけられる夢 落ちる夢ばかり見る人もいます。
この記事では コロナ後遺症で悪夢に悩まされながらも 医療機関の治療とセルフケアで改善していった体験談と 主な治療法 成分 サプリメントの考え方をまとめます。
コロナ後遺症 悪夢 ロングコビッドとは
ロングコビッドで報告される悪夢 不眠の症状
ロングコビッドでは 倦怠感やブレインフォグと並んで 睡眠の質の低下がよく見られます。
寝付きが悪い 途中で何度も目が覚める 早朝に目覚めて二度寝できない といった不眠に加え 悪夢が増えたという訴えも少なくありません。
特に 重症化して入院した人 集中治療室で治療を受けた人では 入院中の記憶が夢に出てくることがあります。
人工呼吸器やモニターの音 医療者の声 息苦しさなどが悪夢として繰り返されると 寝ること自体が恐怖になり 睡眠不足と疲労が悪循環をつくります。
なぜコロナ後に悪夢を見るのか 自律神経と心のダメージ
コロナ後の悪夢には 身体的な要因と心理的な要因の両方が関わっています。
まず 感染による全身の炎症とストレスで 自律神経のバランスが乱れ 眠りが浅くなったり 交感神経が優位なまま夜を迎えたりしやすくなります。
次に コロナ感染そのものが 心に大きなダメージを与えます。
孤独な入院生活 将来への不安 仕事や家族への心配など 強いストレス経験は 脳の中でトラウマ記憶として残りやすく 悪夢という形で繰り返し再生されます。
これらに加えて 長引く体調不良やロングコビッドへの不安も 心のエネルギーを奪い 悪夢と不眠を固定化させてしまうことがあります。
コロナ後遺症 悪夢が改善するまでの体験談
体験談1 入院中の恐怖がよみがえる悪夢が少しずつ減ったケース
一人目は50代男性。
重症肺炎で入院し 集中治療室で酸素投与を受け なんとか退院できたものの その後 毎晩のように入院中の光景が夢に出てくるようになりました。
夢の中で息ができなくなったり モニターのアラーム音が鳴り続けたりして 夜中に心臓がバクバクしながら飛び起きる日々が続きました。
眠ることが怖く 夜更かしが増え 日中は倦怠感と集中力低下で仕事もままならなくなりました。
家族に勧められ 心療内科を受診したところ PTSD様の反応を伴うコロナ後遺症と説明されました。
医師からは 睡眠を整える薬とともに トラウマ記憶に対するカウンセリングが提案されました。
最初の一カ月は 週1回のペースでカウンセリングに通い 入院中の出来事や感情を少しずつ言葉にしていきました。
医師から 「あの時はできることを全部やっていた」「生き延びた自分を責めなくていい」という言葉を繰り返し伝えられ 少しずつ心の緊張がほぐれていきました。
睡眠薬の助けも借りながら 二カ月ほどで 悪夢を見る頻度は週に一〜二回に減り 四カ月後には悪夢を見ない夜も増えてきました。
半年ほど経った頃には 悪夢は月に一度あるかないかになり 「怖さよりも眠気が勝つ」感覚が戻ってきたそうです。
体験談2 毎晩の悪夢と中途覚醒が薬とカウンセリングで落ち着いたケース
二人目は30代女性。
コロナ感染は軽症で自宅療養でしたが 回復後 数週間たってから 毎晩のように 不安な夢 怒鳴られる夢 誰かに追いかけられる夢を見るようになりました。
夜中に何度も目が覚め 朝起きてもぐったりしていて 仕事に行く気力が出ませんでした。
「自分はおかしくなってしまったのではないか」と不安になり 心療内科を受診しました。
診察では コロナ後遺症に伴う不眠症と不安状態と診断され 就寝前に飲むタイプの睡眠薬と 日中の不安を抑える少量の抗不安薬が処方されました。
合わせて 認知行動療法的なアプローチで 「眠らなきゃいけない」というプレッシャーを減らす練習をしました。
医師からは 「眠ろうと頑張りすぎないこと」「布団の中でスマホを見ないこと」「眠くなってから布団に入ること」など 基本的な睡眠衛生のポイントも教えられました。
薬を飲み始めて一週間ほどで 中途覚醒の回数が減り 悪夢の内容も徐々に薄れていきました。
一カ月後には 「怖い夢を見ても すぐに寝直せる」ようになり 三カ月かけて薬を少しずつ減らしながらも 悪夢はほとんど見なくなりました。
現在は 睡眠薬なしでも眠れるようになり 月一回の通院で様子を見ているとのことです。
体験談3 鍼灸と睡眠習慣の見直しで穏やかに眠れるようになったケース
三人目は40代男性。
コロナ感染後 体調自体はある程度戻ったものの なぜか毎晩のように 不快な夢や怖い夢を見るようになりました。
医師からは 「身体的には問題ない」と言われたものの 悪夢と寝付きの悪さで 日中のパフォーマンスが大きく落ちていました。
薬に抵抗があったため ロングコビッドにも対応している鍼灸院を訪れました。
鍼灸の先生からは 「自律神経が夜になってもオフにならず 交感神経が走りっぱなしの状態」と説明され 首肩 背中のコリを緩める施術と お腹を温めるお灸を中心に受けました。
同時に 夜の過ごし方も見直しました。
・寝る二時間前からスマホとパソコンをオフ
・20分ほどぬるめのお風呂に入り 湯上がりに白湯を飲む
・寝る前に感謝したことを三つノートに書く
こうした習慣と鍼灸治療を二〜三週に一度のペースで続けるうちに 一カ月ほどで 「夢は見るけれど 以前ほど怖くはない」と感じるようになりました。
三カ月後には 悪夢はほとんど見なくなり 「いつの間にか 眠るのが怖くなくなっていた」と振り返っています。
心療内科・睡眠外来で受けた診断と主な治療法
悪夢 不眠の評価とPTSDとの違い
悪夢が続く場合 心療内科や精神科 睡眠外来では まず症状の詳しい聞き取りが行われます。
・どんな内容の夢か
・いつ頃から始まったか
・起きたあと どのくらい覚えているか
・日中の気分や生活への影響はどの程度か
入院中や治療中の出来事が何度も繰り返し夢に出てきて 強い恐怖反応を伴う場合は PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断基準に合致することがあります。
一方 そこまで強いトラウマではないものの コロナ後の不安や体調不良から 不眠症に悪夢が付随しているケースもあります。
どちらに近いかによって 薬物療法の種類やカウンセリングの内容が少し変わってきますが 「怖い夢を減らし 睡眠の質を上げる」というゴールは同じです。
睡眠薬 抗うつ薬 漢方薬 そして悪夢治療薬の活用
治療の柱は 薬物療法と心理療法です。
短期的には 睡眠薬で眠りの質を整え 夜間の目覚めや入眠困難を和らげます。
うつ状態や強い不安が背景にある場合は 抗うつ薬や抗不安薬が使われることもあります。
これらの薬は 直接「夢の内容」を変えるというよりも 日中の不安や落ち込みを軽減し 間接的に悪夢の頻度を減らす役割を果たします。
海外では 悪夢の頻度を下げる薬(例えば 血圧薬としても使われる一部の薬)がPTSDの悪夢に対して使用されることがありますが 日本では用量や適応が限定されます。
漢方薬では 不安と不眠を同時に緩和するものや 自律神経を整えることを目的とした処方が選ばれることがあります。
悪夢そのものに対しては 「イメージリハーサル療法」と呼ばれる心理的アプローチがあり 悪夢の内容を書き換えて練習することで 夢の頻度や苦痛度を減らしていきます。
自宅で続けたセルフケアと生活習慣の工夫
寝る前のルーティンづくりとスマホ断ち
悪夢や不眠の改善には 寝る前の過ごし方がとても重要です。
・寝る一〜二時間前からは スマホ パソコン テレビの利用を控える
・強い光を避け 間接照明やスタンドライトに切り替える
・カフェインやアルコールは夕方以降は控える
こうした基本的な睡眠衛生に加え 「眠る前のルーティン」を決めておくと 体が「そろそろ寝る時間だ」と認識しやすくなります。
例えば ぬるめの入浴 ストレッチ 深呼吸 簡単な日記や感謝の言葉を書く などを毎晩同じ順番で行います。
寝床は「眠る場所」に限定し ベッドや布団の中で長時間スマホを見たり 仕事をしたりしないようにすることも大切です。
「布団に入ったら眠るだけ」という条件づけを少しずつ作っていきます。
イメージリハーサル療法と日中の過ごし方の工夫
イメージリハーサル療法は 悪夢の内容を書き換えて繰り返しイメージすることで 悪夢の頻度を減らす方法です。
具体的には 次のような手順で行います。
・よく見る悪夢の内容を簡単に書き出す
・その結末を「安全で安心できる展開」に書き換える
・昼間に その「書き換えたバージョン」を何度もイメージ練習する
例えば「追いかけられる夢」なら 途中で誰かが助けてくれる設定に変えたり 追いかけてくる相手が急にコミカルなキャラクターになるイメージに変えるなどです。
最初は半信半疑でも 続けているうちに 悪夢の内容が弱まったり 頻度が減ったりする人もいます。
また 日中に適度な運動を取り入れることも重要です。
軽い散歩やストレッチは 自律神経を整え 夜の睡眠の質を高める効果があります。
ロングコビッドの悪夢に関連して語られる成分とサプリメント
グリシン GABA テアニンなど睡眠を支える成分
睡眠をサポートするサプリメントとしてよく挙げられるのが グリシン GABA テアニンです。
グリシンは 深部体温を下げて入眠を助けるとされ 寝る前に摂取すると 寝付きが良くなり 眠りが深くなると感じる人もいます。
GABAは 抑制系の神経伝達物質として働き リラックス効果やストレス緩和が期待されています。
テアニン(お茶に含まれる成分)は α波を増やし 心を落ち着かせる作用があるとされ 寝る前に摂ると 心身の緊張が和らぎやすくなります。
これらは「悪夢を消す薬」ではありませんが 寝付きや睡眠の深さをサポートすることで 結果的に悪夢の辛さが軽くなることがあります。
マグネシウム メラトニン トリプトファンの位置づけ
マグネシウムは 神経と筋肉の働きを調整し 緊張を和らげるミネラルです。
不足すると こむら返りや筋緊張 不安感が出やすくなり 間接的に睡眠の質を下げてしまいます。
メラトニンは 体内時計を調整するホルモンで 海外ではサプリとして一般的ですが 日本では扱いが異なり 医師の管理のもとで利用されることがあります。
時差ぼけや概日リズムの乱れに対して使われることが多く ロングコビッドで昼夜逆転が起きている場合に検討されることがあります。
トリプトファンは セロトニンやメラトニンの原料となるアミノ酸で 肉 魚 卵 乳製品などから摂取できます。
寝る前に高タンパク食を無理に取る必要はありませんが 日々の食事で十分なタンパク質を摂ることは 睡眠にもメンタルにも良い影響を与えます。
不安との付き合い方と ロングコビッドlongcovidからの回復を目指すうえで大切なこと
「眠れない自分」を責めないための考え方
悪夢や不眠が続くと 「ちゃんと眠れない自分はダメだ」「明日に支障が出るのに また寝られなかった」と 自己否定に陥りがちです。
この自己否定そのものが 交感神経を刺激し さらに眠りを遠ざけてしまうという悪循環が起こります。
大切なのは 「今日は眠れなくても 明日 少し工夫すればいい」と考える練習をすることです。
眠れない夜があっても 人間の体はある程度 予備バッテリーで動くことができる という現実的な視点も 不安を和らげる助けになります。
家族や職場への伝え方と専門家との二人三脚
悪夢や不眠は 外から見えにくい症状のため 周囲に理解されにくいことがあります。
家族や職場には 「コロナ後遺症の一つとして 夜に何度も目が覚める」「夢でうなされて ぐっすり眠れない日が続いている」と 具体的な状況を伝えることが大切です。
必要に応じて 医師の診断書や説明資料を共有し 「怠けているのではなく 医学的な問題」であることを理解してもらうと 心理的な負担が軽くなります。
専門家と二人三脚で 少しずつ睡眠を立て直していくという姿勢が 長期戦を乗り切るうえでの支えになります。
まとめ コロナ後遺症 悪夢と向き合いながら改善していくために
コロナ後遺症の悪夢は 自律神経の乱れ トラウマ的な体験 将来への不安などが複雑に絡み合って生じる症状です。
心療内科や睡眠外来での薬物療法とカウンセリング 鍼灸や睡眠習慣の見直し 栄養とサプリメントの工夫を組み合わせることで 多くの人が少しずつ穏やかな眠りを取り戻しています。
完璧な「ぐっすり」を一気に目指すのではなく 「昨日より少し楽に眠れた」「悪夢を見ない夜が増えてきた」という小さな変化を大切にしてください。
一人で抱え込まず 専門家と周囲のサポートを借りながら 自分のペースでロングコビッドlongcovidからの回復を目指していきましょう。


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